秋も近付いてきていたある日。
2学期が始まってすぐのある日。
土曜日なので、寝間着でグデーっとなってしまっていたある日。
「・・・梨華姉ちゃん?」
家庭教師がやってきた。

 

 


突然『就活でもしてんのかよ』風な格好で現れた梨華姉ちゃんは
入ってくるなりリビングで母とお茶大会をはじめた。
玄関でぼーっと突っ立てるのもなぁと思って部屋に帰ろうとしたら
リビングから『寝癖くらい直してから来なさい』と召集令が出たので
言われた通りに髪を濡らして白いタオルで頭をがしがし拭きながらリビングへ。
で、そこで言われました。

「梨華ちゃん、今日からあなたの家庭教師になるから」

驚くでしょ。
普通に驚くでしょ。
まったりとした土曜日の午前中に突然『家庭教師』ついちゃったんだよ?
驚かないでどうするってんだよ。
でだ、驚きのあまりタオルを床に落としてしまったあたしにさ、
そのタオルを拾った梨華ちゃんが言ったわけさ。

「よろしくね、ひとみちゃん」

 


梨華ちゃんがスーツ姿で現れてから、時計の針はそんなに動いていないはず。
なのにどうしてか物事は一気に回り始めた。
あたしが何かを言う前に、そそくさと出かけてしまった母
『夕飯までには帰ってくるから』
スーツ姿で体操をしはじめた梨華ちゃん
『よし、じゃあひとみちゃんの部屋に行こう!』
ジャージ姿でTシャツのあたし
『これ・・・ドッキリか何か?』

 

 

秋も近付いてきていたある日。
2学期が始まってすぐのある日。
土曜日なので、寝間着でグデーっとなってしまっていたある日。
梨華姉ちゃんがあたしの家庭教師になった。
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「ねぇ梨華姉ちゃん」
「今は先生だよ」
「じゃあ・・・先生」
「なぁに?」

絶対に先生とか憧れてたでしょ。
今目、光ったもん。

「白いシャツの下に、ピンクのブラとかつけるのはどうかと思うよ」

軽く頭をはたかれた。

 

 

梨華姉ちゃんと母は、あたしに内緒で随分と前からカテキョ−作戦を練っていたらしい。
内緒でっていうのはもちろんあたしが知ったら嫌がるから。
(2人共よく分かってらっしゃる)
で、何で梨華姉ちゃんかと言うと、2回目からも梨華姉ちゃんが家庭教師なら
続くはずだと思ったからだそうだ。

梨華姉ちゃんは近所に住んでる一つ年上のお姉さんだ。
幼馴染みっていうのかな。
小さい頃から一緒に遊んでた。
梨華姉ちゃんは、誕生日が3ケ月しか違わないのにあたしに『梨華姉ちゃん』と
呼ばせたがった。
何でかわかんないけど、まだ小さかったあたしは考えなしに頷いたらしい。
その時からずっと『梨華姉ちゃん』という呼び方だ。
18年たった今も。

「り・・・じゃなくて先生」
「ん?何処か分からない所でもあった??」
「じゃなくてさ、どうしてスーツなの?」

大学生な梨華姉ちゃん。
まだ就活とかじゃないでしょ?

「何かさ、家庭教師ってスーツってイメージがあったんだぁ。
 だからね、お姉ちゃんにかりてきたの。
 ほら、綺麗なお姉さんがちょっと出来の悪い生徒を教えるっていうの?」

・・・何気に毒吐きまくり。
自分で自分のことを『綺麗なお姉さん』って・・・
そんでもってあたしは『ちょっと出来の悪い生徒』ですか・・・

「憧れてたんだ。家庭教師っていうのに。
 でもさ、私あんまり教えるの上手くないっぽいなぁって諦めてたの。
 でね、ひとみちゃんのお母さんから『ひとみの家庭教師やってくれない?』
 って言われた時もどうしようか悩んでたんだけど、ひとみちゃんならずっと
 一緒だったし、大丈夫かなって思って引き受けたんだ」

流れるような綺麗な髪を耳にかけながら笑う梨華姉ちゃんは・・・
やっぱり綺麗だと思う。
ずっと一緒に育ってきたからあんまりそう意識することもないけど、
たまにこういった仕種を見ると、皆が『綺麗になった』っていう理由が分かる気がする。

一緒にいることが多くて、こんな風に勉強を教えてもらったのも何度かあるけど、
どうしてだろう・・・何だか今日は梨華姉ちゃんの一つ一つの仕種が気になってしょうがない。

「ほら、手止まってるよ。それ終わったらちょっと休憩何だから頑張っちゃおう」
「あぁ、うん」

髪をくしゃっと撫でられて、梨華姉ちゃんがいつもあたしを励ます時に
するように髪にキスをしてくれた。

「あ、先生」
「はいはい?次はなんですか?」
「ここの問題なんだけど・・・」

『あ、そこはね』そんな風に言いながらきちんと教えてくれて、その教え方は
昔から全然変わってなくて、そんな些細なことが嬉しくて。
あたしの後ろから背中を包み込むように腕を伸ばして机に手をついて。
ずっとずっと前から変わらない、あたしに何かを教えてくれる時の体勢。

でもちょっとだけ変わったところもあって・・・
梨華姉ちゃんの胸は発育しすぎ。
ってこんなこと考えているあたしもどうかしてるのか・・・?
いやいや、でもほら、あたしも高校生だしね。
って言い訳になってないし・・・。

「どう?分かった?」
「あ、ごめん。もう一回お願いしていい?」
「ちゃんと聞いてたのぉ?ま、いいや、じゃあ最初からね----------」

さすがに2回はぼーっとして聞き流すことも出来ず、今度はきちんと聞いていた。
『やっぱ梨華姉ちゃんは教え方上手いよ』
言葉には出していないけど、心の中で呟いてみた。
その証拠に分からなかった問題は意外と早く解けたから。
梨華姉ちゃんの喜ぶ顔は、『綺麗』というか『可愛い』と思った。
問題を解いてこんな笑顔を見せてくれるなら、ちょっとの頑張りくらい出来るかなって思った。
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「はい、お疲れさん。ちょっと休憩しよう」
「ぬがぁぁぁぁ!!疲れたぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!」
「よく頑張ったねえ、ひとみちゃんやれば出来るじゃん」

さすがにあなたの笑顔が見たいから頑張りましたなんて言えなくて。
『だしょ?』なんて言ってごまかしたりしてみた。

飲み物を用意しに階段を降りて、冷蔵庫の中あさったら麦茶しかなくて、
ま、いっかなんて思いながら麦茶と戸棚にしまってあったビスケットを持っていこうと
思って戸棚の中に頭をつっこんで、かがんで立ち上がったら思いきり戸棚に背中をぶつけた。
地味だけど最高に痛い・・・。
その上ちょっと何かにひっかっかった感触あったし・・・はぁ。
ぼけぼけな自分の頭を小突いてから階段を昇っていった。

「おまっとさ〜ん」
「あ、ありがとうねぇ」

2人してベッドに座って麦茶飲んでビスケットかじって。
無邪気に雑談をしてはいるけど、実はあたしの視線は梨華姉ちゃんの
胸元にチラチラ向いちゃってるわけで・・・
だってさ、お姉ちゃんから借りたというシャツは少し梨華姉ちゃんには小さいらしく
あのさ、あのですね、見えるわけですよ。
ボタンの隙間からですね、そのピンクのレースのブラがですね・・・
チラリと見えてしまってるワケですよ。

自分もさ、女だし見なれてるっちゃ見なれてるけど、何だか今日の梨華姉ちゃんは
いつもとちょっと雰囲気も違くて、あたしの視線はとてつもなくエロ高校生。
気になるんだよ。
本来隠れているものがこうちょっと見えるっていうのはさ・・・。

「ひとみちゃん、ビスケットこぼしすぎ」

そしてボーッとしすぎてボロボロとビスケットをこぼしまくっていたあたしは
梨華姉ちゃんに膝の上とか払ってもらうという何とも子供のようなことをしてしまう始末。
情けない姿。
ちょっと後ろめたさを感じたあたしは気分転換しようと思って立ち上がった。

「どうしたの?」
「あ、いやちょっと寝間着から着替えようかなぁっと思って」
「じゃあ私出てようか?」
「何今さら言ってんの。別に気にしないでいいよ」

別に着替え姿なんて見なれてるでしょ?
一緒にお風呂だって入ってたんだからさ。
少し慌てた姿が何とも可愛いなぁって思いながらとりあえず来ていた黒いTシャツを脱ぎ捨てた。
もう素肌でいるには寒い季節になったんだ。

「・・・背中」
「ん?」
「背中どうしたの?」
「ふぇ?どうかなってる??」

ぐいっと頑張って首を回してみたけど上手いこと見えるはずもなく、ま、いっかなんて
思いながら引き出してを引っ張ってTシャツを取り出そうとしたら、梨華姉ちゃんからのストップ発言。
何ですか?
一応あたし上半身裸なんですけど・・・

「消毒しなきゃ。だってみみず腫れみたくなってるのもあるもん」

あ、じゃあさっき戸棚にぶつけたやつだ。
みみず腫れっていうのは・・・そっか引っ掛けた時に出来た傷か。

「でも消毒液って・・・」
「下にあるでしょ?」
「あ、・・・」

返事を聞かずにすたこらさっさ。
梨華姉ちゃん・・・確か消毒液って・・・。
とりあえずTシャツ着たらえらい怒られそうだから上半身はだかのままあたしはぼんやりとベッドに座って
梨華姉ちゃん待ち。
そしてドタバタ音をたてながら階段を上がってきた梨華姉ちゃんの第一声。

「マキロン切れてるじゃん!!」

そうだよ。
昨日で切れちゃったんだもん。
そう言おうと思ってたのに梨華姉ちゃんあたしの返事聞かずに行っちゃったじゃん。
背中を向けたままそう言ったら梨華姉ちゃんはちょっと黙ってからベッドに座った。
見えないけど、ベッドがちょっと沈んだからそう思ったんだ。

「・・・ん?」

そしてちょっと間があってから背中に感じたのは梨華姉ちゃんの手。
自分よりもちょっと小さな梨華姉ちゃんの手。

「ふぁっ!!」

で、でだ。
背中に感じたのは、多分・・・梨華姉ちゃんの唇。

「ちょ、何やってんの!?」
「ん?消毒だよ」
「だ、大丈夫だから」
「ダメ、動かないで。ばい菌入ってからじゃ遅いんだからね」

そう言って、あたしが逃げないように肩に置いていた手をあたしの身体に巻き付けて。
背中に感じるのは梨華姉ちゃんの唇と舌の感触。
・・・ヤバい。
消毒消毒と言い聞かせていても身体は素直に反応を示すらしい。
唇をぐっと噛み締めていても、思わず息とか声とか出そうになる。

「・・・ん」
「ん?どうしたの?」
「な・・・なんでもない」

ゴメン、梨華姉ちゃん、無理。
我慢とかお預けとかマジ無理。

「きゃっ!」

あれでどうにもならない方がおかしよ。
柔らかい唇や舌の感触にあたしの理性なんてあっという間に打ち砕かれる。
あたしを見上げるその瞳。
怯えているのか・・・それとも受け入れてくれようとしているのか。
今ならいつものような冗談で済ませられる。
梨華姉ちゃん、梨華姉ちゃんは・・・
・・・受け入れてくれる?

このあたしほ欲望のような願望。
『触れたい』『知りたい』『感じたい』
沸き上がって抑えられないこの気持ちを。

からみ合う視線は微妙な駆け引き。
嫌がることはしないよ。
でもね、梨華姉ちゃん-------
梨華姉ちゃんのことを全て知りたいっていう気持ちは止まらないんだ。
全部知ってると思ってた。

今までずっと一緒だったから全部知ってると思ってた。
でもね、今の表情とか全然あたし知らないよ。
あたし以外の人は知ってるの?
そんなの嫌だ。
梨華姉ちゃん、あたしは梨華姉ちゃんの全てが知りたいの。

そっと身体を近付けた。
まだ絡みあう視線はほどけないまま。
距離が近付き、絡みあう視線はだんだんと細さを増し、あたし達は目を閉じた。

感じた唇の柔らかさは、いつもおふざけでしていたキスよりも全然違う感じがして、
無意識のうちに深く深くなっていく。

指の先まで全てを教えて。
全部を知りたいよ。
梨華姉ちゃんの全部、知りたくてしょうがないよ。

絡む舌、聞こえる梨華姉ちゃんの少し荒くなった息使い。
背中に回された腕にどんどんと力が入っていくのを感じる。
離れた唇。
名残惜しそうな口元に軽く唇を落として梨華姉ちゃんの首元に唇を移動させた。
噛み付くようなキスをして、シャツのボタンに手をかけて。

一つずつ開かれていく梨華姉ちゃんに、あたしはすごく愛おしい気持ちを覚えた。
シャツが袖から落ちていく。
外したピンク色のブラは、その場の空気を流すように梨華姉ちゃんの身体から落ちていった。
抱き締めるとお互いの体温がダイレクトに伝わってくる。

離したくない。
離れたくない。

でも、もっともっと知りたいから。
少し冷えた肌に唇を落としていく。
肩に、腕に、胸に、お腹に。
触れた胸の頂き。
梨華姉ちゃんの身体が震えて熱い吐息が口からもれる。

もっとその声が聞きたい。
もっと感じたい。

くわえて舌で転がして。
梨華姉ちゃんの身体は素直に反応を示してくれる。

「んぁ・・・ひ、ひとみちゃん・・・」

吸い付くように胸に唇を押し当てて、咲かせるのはあたしの気持ち。
スカートのホックに手をかけて、降りていくファスナーは、あたしの緊張とリンクしていた。

ゆっくりゆっくり落ちていく。
全て落としてさらけだして。

布越しに梨華姉ちゃんの大切な所にキスをする。
少し湿っているのは梨華姉ちゃんの素直な反応。
舌先で探って核を刺激した。
どんどんとあたしの唾液と梨華姉ちゃんの体液で濡れていく布がもどかしくて、
梨華姉ちゃんの腰を少し浮かせて梨華姉ちゃんがまとっていた最後の一枚を取り去った。
恥ずかしがって隠そうとする足を両手で押さえ、もう真っ赤になっている果実を舌で転がし、
溢れ出る蜜を止めるように舌を差し入れた。
震える腰を押さえ付けて、奥の奥まで進んでいく。

ふいに梨華姉ちゃんがあたしの顔を、ぐいっと引き寄せて唇を絡めてきた。
梨華姉ちゃんの味にそまったあたしの舌を、誘うように探りだして、

潤んだ瞳でうったえかけてくる。
高みに昇るなら一緒にいこう。
果てるならずっと一緒に何処までも。

耳元で、熱い息と一緒に吐き出された『きて』という言葉。
耳の中で梨華姉ちゃんの舌を感じて、疼いていたのが梨華姉ちゃんだけじゃないことに気がついた。
寝間着のズボンを下着ごと下ろして、あたし達の衣服の散らばる中へと投げ捨てた。

腰を落として、全て溶け合うように、本能のままに腰を動かした。
はじめて感じた梨華姉ちゃんは、全て溶け合ってしまいたい程気持ち良くて、
長く感じていたいという気持ちとは裏腹に、あたしはあっという間に果ててしまいそうになる。
そして梨華姉ちゃんが先に昇りつめ、すぐ後を追うようにあたしも果てた。

熱い息が近くでかかりあう距離。
汗ばむ身体をベッドに横たえて、あたし達は何度も口付けを交わした。
まるで楽しい遊びを覚えた子供のように。

「そういえばさ、梨華姉ちゃん知ってる?」
「何が?」

不思議そうな顔をする梨華姉ちゃんの耳元に唇を近付けて、内緒話しをするように囁いた。

『傷口に口つけるとばい菌入っちゃうんだよ』

でもね思うんだ『梨華姉ちゃんのばい菌なら入ってもいっか』ってさ。
梨華姉ちゃんは『そうなんだ』って言ってから後で消毒してあげると囁き返して
あたしの背中にまた唇を落とした。
一度ついた火はなかなか鎮火しない。
むしろちょっとしたことですぐに燃え上がる。

「梨華姉ちゃん・・・やっぱし家庭教師やっちゃだめだよ」
「何で?」
「だってさ----------」

 

ずっとあたしだけの家庭教師でいてほしいもん。

 

髪をかきあげて額に唇を押し当てた。

消えない火はどうしようもない。
もう一度身体を重ねようとした瞬間----------

「ただいまぁ」

玄関の扉があく音がして、あたし達の火は一旦鎮火。
急いで衣服を来て何事もなかったように机に向かって。

「あ、梨華ちゃん遅くまで悪いわねぇ。今お茶入れるからね」

階段を下りる音が遠ざかっていって、あたし達は思わずため息をはいた。
そして小さく笑いあって、額と額とぶつけあった。

 

 

 

 

 

「後でさ、あたしの部屋おいで」

 

 

 

 


色々と消毒してあげるよ。


確信犯なのは梨華姉ちゃん。
そしてまんまとはまるのはいつでもあたし。
消えた火はすぐにつくから、だから今晩もう一度燃え上がろう。

 

 

 

そしてずっとずっとあたしだけの家庭教師でいてね。

 

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