『ひまわり』 −石川梨華の想い出−


ひまわりのような人でした。夏のひまわりのような人。
強くてやさしくて、温かい人。

夢を見ていました。あなたと暮らしたたった半年という間。
人間の人生からしてみれば本当にひとかけらに過ぎないかも
しれない間。

でも、それは私にとって、それまでの人生のすべてといっても
過言でなかった。そしてこれからの長い私の人生にしてもすべ
てかもしれない。

あなたいた一握りの短い期間。かけがえの無い、何にも置き換
えることのできない永遠の時。

まっすぐに、どこにもよれることの無い、ひまわりのような人
でした。

思い出せばいつも微笑みかけてくれる人。目を閉じればいつも
私を抱きしめてくれる温かい心地よいぬくもりの人。

あなたが大好きでした。言葉なんて必要ないくらいに。不思議
なものです、なんででしょうか、私が泣いているときはいつも
あなたが側に居てくれて、私はあなたの側で泣いていました。

私が泣きじゃくっているときは何も言わないでただ私の髪を
なでていてくれて、私が泣き疲れて顔をあげるとあなたは私の
耳元に口を落として言うんです。

「梨華ちゃんには私がいるからね。」

って。うれしくてうれしくてしかたがありませんでした。なんで
こんなに優しいのかって。なんでこんなに好きなのかって。

私がそれを考えてまた泣いちゃうとあなたはまた私を抱き寄せて
照れながら言うんです。

「本当に好きなんだからね」

って。私はうなずきました。あなたにしっかりと伝わるくらい。
あなたがしっかり私の気持ちを感じてくれるくらい。


あなたは覚えていますか?二人で初めて泊まりにいったあの日のこと。

待つことが嫌いなあなたは一時間に一本というバスを待たずに歩く
と言い出して私の手を引いてどこまでも続く道を一緒に歩きました

あのとき見た透き通るくらいに綺麗な海。今でも私の耳に残るは
夏の波の音。

大好きな場所だけどもう二度と訪れることもないんですね。

だって、あなたと約束したから。次も一緒に、二人で来ようねって。
だから私は待っています。でも、あなたともう一度・・・

戯れるように遊んだあの初秋の夜。二人で一緒にした花火。あなたは
私に言いました。

「自分は夏の花火みたいだ。」

って。私が何で?って尋ねると一瞬。本当に一瞬の間だけ輝くために
生まれてきたんだって。

あなたは知っていたんでしょうか、自分のことを。

普段の強いあなたからは想像もつかないような言葉に儚いようなその
表情。

私は目に涙を浮かべて、あなたを見返すとあなたはまたいつものような
顔に戻って

「そんな深く考えないでよ。花火みたいに綺麗ってことだよ。」

って。あなたはいつもそう。自分のことをもっと気遣うべきだったのに
私のことをいつも心配してくれた。

私があなたと最期にあったのは雪が降り出したころ。ベットで横に
なっていたあなたが私に言った言葉。

「私はいつも一緒にいるから。どんなときも味方だから。例え回り

の誰もが梨華ちゃんを否定しても私だけはあなたを肯定してづける
から。また、生まれ変わっても私はあなたを見つけ出して言うよ。」


『世界中の誰よりもあなたを愛しています。』

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 


『たんぽぽ』 −吉澤ひとみの記憶−

 


たんぽぽのような君と出会った。雨にうたれても風に吹かれても
負けないような本当に心の強い人。清い人。


夢を見ていました。君と暮らしたたった半年という間。
人間の人生からしてみれば本当にひとかけらに過ぎないかも
しれない間。

でも、それは私にとって、普通の人の人生を一生分生きた半年。
君と出会わなかったら私は・・・。きっと後悔していた。自分と
いうことすべてに。

君といたことが。君が私のそばに居てくれたことがなによりもかけがえ
のない時間。終わることもない永遠の時。


雨が降ってくじけても、晴れの日がくればいっぱいに花びらを
咲かせるたんぽぽのような君。


思い出せばいつも私をやさしく包んでくれた君。目を閉じれば
今でも思い出される君のぬくもり。


君と一緒に居て、別れた後で私はいつも考えることがあった。
不思議なことで君とどんなに愛し合った後でも別れた後で一番
最初に考えること、思うこと。


それは、もう2度と君に会えなかったらどうしようということ。
なんでだろうね?そんなことあるわけ無いのに。君がどんなに
離れていても私は君を見つけ出してみせるのに。


「また、明日会おうね。絶対だよ。」

うれしい言葉。なによりも嬉しい言葉のはずなのにどこか不安に
なる私がいました。

本当に好きだから。誰よりも何よりも君が大好きだから。そして
昨日よりも今日の方が君のことを好きになっているから。

「明日だけじゃないよ。明後日もその次もその次も・・・。」

そう言っているときの君の笑顔。好き。本当に大好き。その笑顔
を思い出して私は不安を吹き飛ばす。


君は覚えているのかな?二人で泊まりに行った田舎町の小さな
旅館。


旅館の窓から見たのはそれまでで見たこともないような綺麗な
夜空。満面の星。風が運んでくるのは夏の風鈴の音。


あの時君は言ったよね。「私と星空どっちが綺麗?」って。私が
言ったこと覚えてる?星空を見ている君が一番だって。


大好きな君ともう一度。本当にもう一度だけでも。

神様がたった一つだけ願いをかなえてくれるとしたら私は迷わず
お願いします。彼女ともう一度だけ星を見せてください。


君と一緒にいった紅葉が広がっている場所。二人で一緒に拾った
落ち葉。君は言いました。


「落ち葉なんて嫌い。木と離れ離れになっちゃう落ち葉なんて。」

って。私には君が何を言っているのかすぐにわかった。でも
ずるい私は気づかないふりをしていた。


君だけじゃないんだよ。私だって別れたくなんてないよ。


哀しみに暮れる君のその表情。嫌い。みたくなかった。笑顔の君が
私は一番好きだから


でも、私が何も気づかないふりをして「どうしたの?」って聞くと
一生懸命に表情を隠した笑顔で

「うううん、なんでもないよ。紅葉は綺麗だから嫉妬してたんだ。」

って。君の精一杯の言い訳。でも、それが君の優しさであり温かさ。
そんな君を愛した私。そんな私を愛してくれた君


君との別れのときがきてしまった。未練がなかったなんていったら
嘘になる。でも、後悔ではなかった。君と出会えたんだから。


「生涯であなた以上に人を好きになるなんてことはないかもしれない。
けれどそれでも、あなたのことを知っているから。あなたは私の悲しむ
顔なんて見たくないはずだから。私は生きます。あなたがこれから生きる
はずだった分まで。あなたが生きたことを思い出にしないためにも。
さよならなんていいません。代わりに言います。」

 

『あなたを愛せたこと絶対に忘れません』