さぁまず説明しよう。
ここが何処かで、どうしてこんな時間にこの面子が集められたかってこと。
まず、ここは僕と石川さんが住んでる家だ。
そして時間は23時48分。
でもって今いる面子はごっちんカオリさん紗耶香に圭ちゃん石川さんに僕。
なんともすでにイヤな予感がする面子だったりする。
はじまりは今日の夕方っていうか夜。
突然僕と石川さんの携帯が同時刻に鳴り響き『部屋の提供よろしく。お酒とおつまみは持っていくから』
という、とっても簡潔なことを紗耶香とカオリさんから言われたからだ。
ちなみに、その時僕らは夕飯作りの真っ最中で、おまけを言うなら金曜の夜だしたまには一緒に
お酒でもちょっと飲んじゃおうかなんて言ってた時だったりもする。
「さぁぶっちゃけエロタイムいくぞー」
だから、こんな風な酔っぱらい軍団(ここに来る前から軽く飲んでたらしい)がここに来て、
さらに徹夜で話す雰囲気をかもし出していることなんていうのは全くの予想外なことで───
「吉澤はメモ準備だわね!」
こうして正座をさせられていることに、今でもあまり納得いってなかったりする。
多分、石川さんも同じかもしれないけど、すでにお眠タイム突入中のごっちんを膝枕しながら
諦めたように皆が持ってきたお酒に手を伸ばしていた。
「あの…今さらな質問なんだけどさ、どうして突然こんな会を家で開こうなんて思ったの?」
「いやさ、さっきまで外で飲んでたんだけどさ、やっぱし金曜の夜じゃぁ
時間制限とかあるじゃん。でもこう飲み足りなくて語り足りない時ってあるっしょ?
それで、飲んでた場所がこの近く。なら一緒に飲んで語ってついでに吉澤に
お勉強なんてさせちゃおうってことになって」
早口で唾がかかる距離で紗耶香がニマニマ笑いながら教えてくれた理由。
すんごく訊かなきゃよかったって思った。
なんて言うか、すごく予想していたことと同じでさ、脱力しちゃったんだよね。
まぁ僕がなんと言おうとこやつらは出ていかないだろうし、話題を変えるつもりもないだろう。
今僕が第一にすることは…諦めて受け入れるということだ。
「ぶっちゃけさ、吉澤、おまえ早漏だろ」
そう、この話題の中心人物が紗耶香で、司会みたいのも紗耶香で、いつも紗耶香の暴走を
抑えていてくれるごっちんが睡魔に襲われている最中だろうと、僕は諦めて受け入れなくちゃいけなんだ…。
「…いや、あの」
「違うよ、紗耶香、そういうのは石川に訊いた方がはやいんだって」
「…いえ、あのぉ」
「カオリは圭ちゃんは持久力長いと思う」
「おまえ、そんなの突然ばらすなよ…」
「ちなみに、俺早漏じゃないよ」
「んぁ」
…開始早々だけど、何処かに帰りたい。
とっても、すんごく、めちゃくちゃ帰りたい。
ねぇ、紗耶香も圭ちゃんも気付いてる?
石川さん引きつった笑顔だってこと。
それっておもいきし答えになりそうじゃん。
いや…あーあーあー…
「吉澤が早漏なのか、それとも石川が名器なのか微妙なところだよね」
しかしカオリさん、酔っぱらってなくてもだけど、すんごいストレートですよね。
オブラートで包むってこと、あまりしませんよね。
圭ちゃん、こういうのにツッコムのは夫である圭ちゃんの役目だよね?
「俺、吉澤が早漏だと思う」
…この酔っぱらいが
ねぇ、僕軽く凹むよ?
いいの?いいの?本気だしたら石川さんよりもネガティブなんだよ?
「ま、まぁどっちでもいいじゃないですか。ほら、あの、
えぇっと、えぇっと…あ!カオリさんの胸元に赤い痣がー」
「…んぁ、梨華ちゃん、すんごい棒読みだね」
「え?ついてる??」
「んな見える所につけるかい」
「へー、圭ちゃんそういうところ、気使ってるんだ」
石川さんGJ
すんごいGJ
さすがです、さすがですよ石川さん…
だけど軽く凹みましたよ、えぇ、皆のおかげで凹みましたよ。
「そりゃそうでしょ、学生じゃあるまいし」
「んぁ、じゃぁいちーちゃんは問題児だね」
軽く足が痺れはじめていて、さらに凹んでいた僕の向側で、石川さんの膝の上でぬくぬくとしていた
ごっちんは、どうやら睡魔撃退を見事成し遂げたらしく、大きくノビをしながら起き上がった。
あ、まだ目が半分閉じてる。
あ、ホッペになんか痕ついてる。
あ、石川さんのホッペにチューした。
「いちーちゃんはさ、後藤がホットパンツ履くの知ってて内股とかにつけるよね」
「あー…そうだったっけ?」
「何とぼけてんのさ、いちーちゃんは本能のままに突っ走りすぎるんだよ」
「えーだってそれも愛じゃんかよー」
…うおーい、痴話喧嘩なら違う所でやってくれー
ってか、なんか幼馴染みと親友のこういう話し聞くのも複雑な感じだなぁ。
まぁさ、ごっちんの首にき、キスマークなんていうのは何度か見ちゃってたりするけどさ…。
「それにいちーちゃんさ、お酒飲むと暴走しすぎ」
にしても…酔っているとはいえ、今日のごっちんは暴走してるなー。
どうしたんだろう。
何かあったのかな?
「ごっちんって、寝起き悪かったっけ?」
「いや、そんなでもなかったと思うんですけど」
僕らが頭をこてんと横に倒していると、白子に手を伸ばしていた圭ちゃんが僕らの疑問に答えてくれた。
「さっきね、店で飲んでる時に紗耶香が隣にいた女の客に絡まれたんだよ」
「え?そうだったっけ?カオリ全然そんなの覚えてないよ?」
「んー多分トイレかどっか行ってた時じゃない?」
そりゃそんな紗耶香が悪いってワケでもないよなぁ。
でもごっちんは紗耶香と付き合い出してからかなり嫉妬深いのが見えてきた気がするし…
「…ごっちん、なんか苦労しそう」
うん、僕もそう思う。
紗耶香もさ、きっと酔っぱらっててヘラヘラ笑ってたんじゃないの?
なんか目に浮かぶようなんだけど。
「そういえば、吉澤の白くて長い首についた赤い痣って見たことないかも」
そしてこの酔っぱらいの集まりっていうのは、基本はキラーパスらしい。
それもいつもあんまし酔わないカオリさんが今日はいつもよりも飲んでるらしく、
赤い顔して隣にいた石川さんに絡んでいる。
今のカオリさんの状況を説明するなら、石川の肩を抱いて頬をピたッとくっつけてすごい笑顔で笑ってる。
こんな感じだろう。
「そりゃぁ、私だって気を付けてますもん」
「じゃぁ見えない所はバッチリなんだ」
「そ、そんなバッチリってワケじゃないですけど…」
石川さん、絡まれましたね。
きっとしばらく逃れられないですよ。
ついでに僕も助けに行けないですよ。
ほら、だってカオリさんが『ここには近付くな!!』オーラだしてますもん。
ちょっと、怖いですもん…
ちなみに、圭ちゃんはずっとお腹気にしてるって言ってたのに白子やら軟骨の空揚げやらに手を伸ばして 黙々と飲んでいる。
そして、僕は───
「このおっぱい星人ぐぁー」
「なんだよぐぁーって」
「後藤は処女じゃない!!」
「何も言ってないじゃんかよ…ンなの俺が知ってるっつぅの」
───永遠と続きそうな痴話喧嘩に耳を傾けていた。
「それに何この前!」
「んだよ…」
「イヤだって言ったのにお尻…」
「あー!!!!」
「ブー!!!!!!!!!」
…ギャグみたにお酒吹いた。
それも圭ちゃんにかけた。
ちょっと飛び散って紗耶香の髪にもかかった。
「何よ…」
「何こんな所でそんな発言してんだよ!それに挿れてないだろが!」
「でも興味津々だったじゃん」
えーっと、えーっと、何ですか?なんですかこの本当にぶっちゃけトーク。
僕、正直どんな顔して聞いてたらいいのか分からなくなってきたんですけど…
は?ってか紗耶香何してんの?
そんなことまでしてんの?
…まさか圭ちゃんも!?
「え?何??どうした?なんでおまえ俺の顔に盛大に酒ふっかけてるの?は?へ??」
こんなとぼけた顔してるのに、圭ちゃんも…圭ちゃんもか…。
「おまえな、そう言うけどな、俺そんな酷いことした覚えないぞ」
「へー、じゃぁ後藤以外の人には結構酷いことしてたんだー。そぉなんだー」
…布巾取ってこよ。
あ、手折るも取ってこなきゃ…ついでに顔も洗ってこなきゃ…
ちょっとしたショック。
いや、そんなでもないけど、そんなんでもないけどね、だけど、なんていうの?
ぶっちゃけすぎトークにね、僕一人取り残された気がしないでもないんですよ、はい。
「おまえなー、ちょっと酔い過ぎだぞ」
「そんなのいちーちゃんに言われるすじあいないもんねーだ」
「ほら、もうこっち飲めよ」
「あーごとうのおさけかってにとるのだめー!!」
・・・。
「おっぱい星人でちょっと最近えっちがしつこいくせになまいきだぞこらー!!」
「イテッ!ばか何も引っ掻くことないだろ!」
「もう正座!そこ正座!!これからごとーがえいえんとせっきょーしちゃるんだからー」
「しちゃるて…あ、はい、はい座ればいいんですね、分かりましたよ、座りますよ」
・・・。
「まずはお尻禁止!!」
「そこからかよ!!」
・・・。
「えー!!!マジで!!」
「ちょっと、カオリさん、声大きいですよ!!」
「そりゃ、ちょっと吉澤呼び出しだわ」
・・・。
「フェ…」
「あー!駄目、今はそれ以上ここで言うな!絶対言うな!!!」
・・・。
「吉澤!ちょっと来なさい!!お姉さんの所に来なさい!!」
「いいですから!呼ばないでいいですから!!」
あのさ、どうしたらいいのかさっぱり分からなくなってきたんだけどさ、
とりあえず、皆今日帰る気なんてないよね、そうだよね。
あのさ、今日ってちょっとノリ気だったって分かってる?
分かってないよね、そうだよね、分かってたら怖いもんね。
…布巾と手折る取ってこようっと。
「あのぉ…で、結局何なの?」
もう、これからは、金曜の夜に酔っぱらったもまいらなんてお家入れないからな…。
「よしざわー!!はやくこーい!!!!」
…どっかに帰りたいよぉ