秋っぽい気がするような午後の夜。
つま先を伸ばしたりしながらテレビを見ていると、突然テレビがプツンと消えた。
悪戯の犯人探しはありえなくらいに簡単だけど、少しは驚いたフリでもしてみようか。
いやいや、こんなこと考えた時点でもう遅いか。

「今日はですね」
「はいはい」
「こんな日の過ごし方講座を開きたいと思います」
「こりゃまた突然ですね」

腰に手を当ててる笑顔な石川さんはピンクのパジャマ姿だったりする。
現在時刻は22:37
ちょんちょこりんな頭をしたピンクのパジャマさんはすでに寝る準備はばっちりだ。

「まずは正座なんかしちゃいましょう」

ほんのり桃色のほっぺを揺れる髪で隠したり隠さなかったりしながら彼女は何処かに向かって指をさしてポーズを作った。
…夜のせいなのか、いつもよりもちょっとぶっ飛び気味が気がするのはきっと気のせいじゃ…ないんだよね。
いや、そんなのも全部ひっくりめて好きだよ?本当だよ?

「はーやーくー」

言われた通りに正座をして、背筋を伸ばして石川さんの方を向いてみる。
なんとなく次の行動が読める気もするけどここは何も言わない方がいいんだろう。

「きーぷねキープ、それきーぷだかんね」

そう言いながら転がって、いも虫みたく近寄って、なんとも言えない格好で一時停止。
そんな格好というのは顎と膝を床につけて、お尻が上に上がっている尺取り虫の伸びてない時みたいな格好だったりする。

「…どうしたんですか?」
「んー高さがね、やっぱり違うなーと思って」

もうちょっと近寄ってきた石川さんに、両足をさっきみたく伸ばされて、やっぱり思った通りだなーなんて思っていたら、あれ?あれ?何ですか?
しゃくとり虫さんは膝立ち移動。
僕は壁まで追いやられ、がつんとぶつかった所で完全ストップ。
よいしょよいしょとやってきた、ピンクなパジャマなちょんちょこりんさんは僕の膝の間にすっぽり納まったりしている。
しばらく止まった動きの中で、彼女は腕だけ動かして掴んだクッションを抱きしめた。

「やっぱりさ、ちょっと涼しくなった秋ってさ」

クッションごと抱えた僕の腕の中で彼女は呟いた

「夏よりもこんな風にして過ごしたくならない?」

秋の夜の過ごし方。
夏にも似たようなこと言っていたことは、うん、黙っておこう。
そして黙って頷いておこう。
縦に振った首に嘘はないから。